遅刻をせず、周囲への気配りができ、任せた仕事もきちんと進めてくれる。会社にとって頼りになる人ほど、ある日突然、退職を申し出ることがあります。

「給与が低かったのか」「もっと早く引き留めればよかったのか」と考えるかもしれません。しかし、退職は直前の出来事だけで決まるものではありません。本人の中では、ずっと前から小さな違和感が積み重なっていることが多いのです。

ここでは、いい人から辞める会社で起きやすい3つのすれ違いを見ていきます。

1. 問題がないのではなく、言わなくなっている

まじめで責任感のある人ほど、不満を強くぶつける前に自分で受け止めようとします。周囲に迷惑をかけまいとし、場の空気も壊さないようにします。

そのため、気持ちが離れ始めても表面上はいつもどおりです。会議で反対せず、仕事も投げ出しません。会社から見ると「何も問題がなかったのに、急に辞めた」ように映ります。

見るべきなのは、不満の多さではなく、以前は言っていた意見や相談を、言わなくなっていないかです。静かさを安定と決めつけず、変化に気づくことが大切です。

2. 「任せている」が「放置された」に変わっている

中小企業では、実務を通して仕事を覚えてもらう場面が多くあります。この育て方が機能するには、次の3点が必要です。

これらが曖昧なままでは、会社の「任せて育てる」という意図が、社員には「放っておかれた」と伝わります。

いい人ほど、忙しい上司に遠慮して自分で何とかしようとします。しかし、成長の手応えも求められる基準も見えない状態が続けば、「ここで頑張る未来が描けない」という諦めにつながります。

3. 頑張りと報われ方が一致していない

評価制度の有無よりも先に確認したいのが、日常の中で何が評価されているかです。

周囲を支える人より、発言の強い人が得をしていないか。後輩を育てる人より、目先の数字だけをつくる人が評価されていないか。現場を整える人の貢献が、当たり前として見過ごされていないか。

会社のために誠実に動く人ほど、このズレに消耗します。給与を上げるだけでは、「自分の働き方を見てもらえていない」という感覚までは解消できません。

引き留める前に、会社の流れを見直す

退職を防ぐために特別な制度から始める必要はありません。

言いにくいことを少しずつ話せること。期待する役割が伝わっていること。良い行動がきちんと認められること。この3つが日常の中でつながると、社員は自分の働き方に意味を感じやすくなります。

採用と定着は別々の課題ではありません。今いる社員が大切にされている実感を持てる会社は、求職者にも魅力を具体的に伝えられます。そして、「この会社なら知人にも勧めたい」と思われる会社へ近づいていきます。

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